Covid-19におけるトシリズマブと酒類提供禁止に対して思うこと

COVID-19
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Interleukin-6 Receptor Antagonists in Critically Ill Patients with Covid-19

トシリズマブは日本で開発された国産生物学的製剤であり、様々な疾患に対して効果的であることが証明されています。大雑把に炎症を起こすカスケードのブロックをするので、我々が相手にしている関節リウマチなどの膠原病や、血液疾患まで様々な分野で活躍しています。

炎症を抑える薬であるため、Covid-19のような感染に伴う炎症も抑えられる可能性があるとして、早くから注目されていました。本論文ではICU入室していた重症患者におけるトシリズマブ投与は生存を含む転帰を有意に改善したことが示されています。

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東京、大阪、その周辺都市を含め、Covid-19は再燃しており、本日夕に再度緊急事態宣言が発令される見込みとなっています。また酒類を提供する飲食店には休業を要請する可能性があるとのことで、現在各方面から様々な声が上がっています。

私は医師という立場で医療の現場を見てはいますが、我が地域は医療現場の逼迫をとてつもなく感じるという状況には至っておりません。ですから、報道でしか過酷な医療現場を知ることができません。
3月までは救急も携わっていたこともあり、Covid-19の可能性がある患者に対する感染対策は本当に大変であることを理解しているつもりですし、いつも対応できていた患者数の3分の1程度しかスピードが出ないことも経験済みです。それに加え、重症化の多い変異株では、呼吸管理を要することが多く、人工呼吸器を使用すると人員を要する他、そもそも人工呼吸器の数が足りないなどの問題が出てくるわけです。言葉で言えば簡単そうですよね、文章を書きながら思ってしまいました。

全員が全員とは言いません。命を直接救うことができる職業は医師だけであると、そしてその仕事がしたいと思って医師になっています。大学6年間の多くの時間を勉学に当て、不条理な実習を乗り越え、国家試験を終えて晴れて自らの意思で医師になっているわけです。医師にも様々な種類がいることは認めますが、医師になるまでの過程は皆同じです。とりあえずなるか〜でなれる職業ではありません。

ですから、このような状況下になっても、前を向いて仕事をしている人は多いと思います。だってそれがしたくて医師になっているんですから。Covid-19が流行して、世間を騒がせても、我々ができることは目の前の患者を救うことのみです。なのに、それができない状況になってきました。そもそも重症なのに病院で十分な対応ができない、もはや病院に入院させることすらも叶わない。
大阪で、罹患男性が救急車内に1日半もの間搬送病院が見つからないという理由で取り残されていたというニュースがありました。その間もちろんその救急車は出動できません。最終的にはその男性は呼吸不全に至り、重症患者として搬送されることになりました。

このニュースは本当に衝撃的でした。医療の逼迫を感じざるを得ないニュースです。

ですから医師という立場としては感染者数を抑える対応は賞賛されるべきであるものだし、必要なものだと思っています。

僕がSNSでフォローさせていただいている方々の中には酒類を提供する飲食店に勤務や運営されている方が多数います。僕自身お酒が好きなので、そういう方達と絡むことができることはすごく楽しく、新たな視点を得られています。

酒類を提供する飲食店に勤務や運営されている方の反応を見ていると、心が痛くなります。酒類提供の禁止は感染対策としては是とされています。ですが、実際飲酒提供を抑えるとどこまでの感染対策として成り立つのかわかっていないので完全な是かは甚だ疑問が残るのですが。エビデンスを示してほしいですね。どうせ路上飲みや宅飲みパーティが増えるんですよ。そっちの方が感染リスクは高いと思います。正直意味あるのと思ってしまいます。少なくとも職を奪うという点では非です。

感染者数を効果的に抑えられる可能性が本当にあるかわからない今回の方針は現状反対です。

したいことができなくなっているという現状はおそらくどの職業でも同じなのもしれません。

ですが、今回の酒類提供禁止の話題はすごく考えさせられました。何かできることはないのでしょうか。政府や自治体が対策をしてくれることを望みますが、それだけでは足りない可能性があります。何かできることはありませんか。

長々とすみません。一人のただの戯言だと思ってください。立場なんて関係ありません。

N Engl J Med. 2021 Apr 22;384(16):1491-1502. doi: 10.1056/NEJMoa2100433.Epub 2021 Feb 25.

Background: The efficacy of interleukin-6 receptor antagonists in critically ill patients with coronavirus disease 2019 (Covid-19) is unclear.

Methods: We evaluated tocilizumab and sarilumab in an ongoing international, multifactorial, adaptive platform trial. Adult patients with Covid-19, within 24 hours after starting organ support in the intensive care unit (ICU), were randomly assigned to receive tocilizumab (8 mg per kilogram of body weight), sarilumab (400 mg), or standard care (control). The primary outcome was respiratory and cardiovascular organ support-free days, on an ordinal scale combining in-hospital death (assigned a value of -1) and days free of organ support to day 21. The trial uses a Bayesian statistical model with predefined criteria for superiority, efficacy, equivalence, or futility. An odds ratio greater than 1 represented improved survival, more organ support-free days, or both.

Results: Both tocilizumab and sarilumab met the predefined criteria for efficacy. At that time, 353 patients had been assigned to tocilizumab, 48 to sarilumab, and 402 to control. The median number of organ support-free days was 10 (interquartile range, -1 to 16) in the tocilizumab group, 11 (interquartile range, 0 to 16) in the sarilumab group, and 0 (interquartile range, -1 to 15) in the control group. The median adjusted cumulative odds ratios were 1.64 (95% credible interval, 1.25 to 2.14) for tocilizumab and 1.76 (95% credible interval, 1.17 to 2.91) for sarilumab as compared with control, yielding posterior probabilities of superiority to control of more than 99.9% and of 99.5%, respectively. An analysis of 90-day survival showed improved survival in the pooled interleukin-6 receptor antagonist groups, yielding a hazard ratio for the comparison with the control group of 1.61 (95% credible interval, 1.25 to 2.08) and a posterior probability of superiority of more than 99.9%. All secondary analyses supported efficacy of these interleukin-6 receptor antagonists.

Conclusions: In critically ill patients with Covid-19 receiving organ support in ICUs, treatment with the interleukin-6 receptor antagonists tocilizumab and sarilumab improved outcomes, including survival. (REMAP-CAP ClinicalTrials.gov number, NCT02735707.).

背景:新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の重症患者に対するインターロイキン-6 受容体拮抗薬の有効性は不明である.

方法:進行中の国際共同多因子適応プラットフォーム試験において,トシリズマブとサリルマブの評価を行った.集中治療室(ICU)で臓器サポートが開始されてから 24 時間以内の成人 Covid-19 患者を,トシリズマブ(8 mg/kg 体重)を投与する群,サリルマブ(400 mg)を投与する群,標準治療を行う群(対照群)のいずれかに無作為に割り付けた.主要評価項目は呼吸器および心血管系のサポートを受けていない日数とし,院内死亡(-1 の値を割り当てる)と,21 日目までの期間中の臓器サポートを受けていない日数を組み合わせた順序尺度で表した.優越性,有効性,同等性,無益性の基準を事前に規定し,ベイズ統計モデルを用いた.1 を超えるオッズ比は,生存の改善,または臓器サポートを受けていない日数がより多いこと,あるいはその両方を表した.

結果:トシリズマブとサリルマブは,いずれも事前に規定した有効性の基準を満たした.この解析の時点で,353 例がトシリズマブ群,48 例がサリルマブ群,402 例が対照群に割り付けられていた.臓器サポートを受けていない日数の中央値は,トシリズマブ群 10 日(四分位範囲 -1~16),サリルマブ群 11 日(四分位範囲 0~16),対照群 0 日(四分位範囲 -1~15)であった.修正累積オッズ比の中央値は,対照群との比較でトシリズマブ群 1.64(95%信用区間 1.25~2.14),サリルマブ群 1.76(95%信用区間 1.17~2.91)であり,優越性の事後確率はそれぞれ 99.9%超,99.5%であった.90 日生存の解析では,2 つのインターロイキン-6 受容体拮抗薬群を合わせたデータで生存の改善が示され,ハザード比は対照群との比較で 1.61(95%信用区間 1.25~2.08),優越性の事後確率は 99.9%超であった.すべての副次的解析で,この 2 つのインターロイキン-6 受容体拮抗薬の有効性が支持された.

結論:ICU で臓器サポートを受けていた重症 Covid-19 患者において,インターロイキン-6 受容体拮抗薬のトシリズマブとサリルマブによる治療により生存を含む転帰が改善した.(REMAP-CAP 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02735707)

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